冷房病
  エアコンにより過度に体を冷やされ室温が外気温に比較して低くなり過ぎることによる体の変調を言う。
高温多湿の日本に多い文明病である。


<冷房病の自覚症状>

疲労倦怠感、頭痛、食欲不振、腹痛、下痢、めまい、手、足、腰、背すじの冷え、手足のだるさ、神経痛、けんしょう炎、生理異常や生理痛などで、生来この様な症状を持っている人は、さらに症状が悪化する。
男性より女性、体力のある人より無い人、病人、高齢者の訴えが多い。


<冷房病の病因>

屋外は高温多湿で室内は低温低湿度になりその差が大きいと、急激な変化に体が適応出来なくなる。
夏は薄着で皮膚の緊張がゆるみ冷気が生体に悪影響を及ぼす。
日本人は冷飲料の摂取量が多いので体内に余分な水分が貯留する傾向にある為、冷房による害が倍加される。


<漢方薬の対応>

冷房による障害は漢方では冷えによる障害としてとらえらており、冷えにより体内に余分な水分が貯留する傾向があり、症状をさらに悪化させるので、体を温め血行を改善し、末梢循環を改善し体の余分な水分を発汗や利尿にて排出させる事により症状を改善させる。


<代表的な漢方薬処方>

桂枝加朮附湯(K47)
体力が無い冷え症の人の筋肉痛、関節痛や腹痛に用いられ、悪寒して頻尿、又は尿量の減少を訴える。
体を温め、血行を良くして、体内の余分な水分を尿として排出させ、症状を改善する。

桂枝加苓朮附湯(K49)
桂枝加朮附湯と同様の体質、症状に用いられ体内の余分な水分を排出させる働きが強い。

当帰芍薬散料(K147)
比較的体力に乏しく、生来冷え症、貧血傾向で疲労しやすい人の頭重、めまい、肩こり、動悸、生理不順、生理痛、低血圧、低体温、浮腫、頻尿傾向に用いる。
体を温め、貧血を改善し、血行を良くして女性ホルモンの分泌を高め体内の余分な水分を尿として排出させ、症状を改善する。

補中益気湯(K178)
生来胃腸が弱く、体力が無い疲れやすい人で疲労倦怠感、食欲不振、体重減少を訴える。
冷やされて弱った胃腸の働きを高め、体力を増進させる。

清暑益気湯(K117)
生来体力が無く、胃腸の弱い人で、特に夏に体力を消耗して食欲不振、軟便、疲労して、体重減少を訴える。
冷やされて弱った胃腸の働きを高め体力を増進させる。

十全大補湯(K96)
生来特に体力が無く、疲労倦怠感が著しく、食欲不振、手足の冷え、貧血があり、体全体が冷やされ、全身衰弱の症状が悪化した人に用いる。

藿香正気散(K17)
体力中等度の人で、冷飲料を摂り過ぎ胃腸を冷やし、さらにエアコンの冷えが加わり、風邪様の症状、食欲不振、下痢、全身の疲労を訴える人に用いる。
夏期に常用して胃腸を整え、心身を軽快にする。

人参湯(K155)
体力が無く、冷え症で顔色が青白で胃腸が弱く、下痢しやすく、腹痛、吐き気、口中に薄い唾液がたまり、尿量が多い人に用いる。

五積散(K67)
体力中等度の人で、外部から体を冷やされ湿気にあてられて起こる胃腸病、腰痛、神経痛、頭痛、生理痛を改善する。

葛根湯(K20)
体力中等度の人で、胃腸が丈夫で、悪寒、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みやだるさを訴える人に用いる。
体表の冷えを改善して体を温め血行を良くする。

麻黄湯(K179)
体力の有る胃腸が丈夫な人で、重度の頭痛、悪寒、咳、関節痛、腰痛、身体痛を訴える。
極度の体表の冷えを温め、血行を良くして発汗、利尿を促して症状を改善する。

小青竜湯(K104)
体力中等度で胃腸の丈夫な人の、気管支炎、喘息、水様の痰を伴う咳、鼻水、浮腫の症状に用いる。
体表の冷えを温め改善する事により身体上部の余分な水分を発汗と排尿にて体外へ排出する。

<養生及び注意>

室内の温度を外気に比し極端に下げない様に、エアコンの温度は20℃以下にしない様26℃位が望ましい。除湿にセットして外気との温度差を少なくする様心がける。
冷飲料の摂り過ぎに注意して、暖かい飲物にて水分を補給する。
温かく消化の良い、栄養バランスの取れた食事を心がける。
女性は特に冷房中の室内では、膝かけ、体にはおる着衣、スカートよりズボンの着用、下半身の下着を厚めにする様心がける。

毎年冷房病に患りやすい人で症状が予見できる人は、体質、症状に合った漢方薬をあらかじめ服用し続けると予防する事ができます。 



暑気あたり
  俗に、夏バテ、夏まけの事で、漢方では中暑病と言われ暑さにあたると言う意味である。
高温多湿の日本では、特に多くの人が体調不良を訴える。


<暑気あたりの自覚症状>

何となく力がでない、心身の疲労、頭痛、胃腸の働きの低下による食欲不振、下痢、嘔吐などの症状を訴える。
患りやすい人は、高齢者、やせて体力が無く、胃腸の弱い人に多く現れる。


<暑気あたりの病因>

暑さの為発汗過多になり、体の中の水分が不足して脱水症状が起こり、体液のバランスが崩れる。
暑さに遭うと消化器系の機能が低下して、食欲不振や下痢などにより体のエネルギー源が摂取できない為、エネルギー不足状態になる。
気温の上昇に伴い、体内の熱の放射がうまくいかず体内に熱がうっ滞して、心身の疲労、胃腸の働きが低下する。
冷飲料の摂り過ぎにより消化液が薄められ、また胃腸が冷やされる為、食物の消化吸収がうまくいかない。
暑さにより睡眠不足が続き、体調不良を起こす。
暑さによりビタミンB1の消費が増えるので、体内での不足が起こり、潜在性の脚気様症状が現れる。


<漢方薬の対応>

漢方では胃腸の働きを高め、体力の消耗を改善する薬用人参の配合された処方や、体内の水分代謝を調節したり、自律神経の安定を保つ漢方薬を体質、体力、症状により処方を決定する。


<代表的な漢方薬処方>

清暑益気湯(K117)
体力が無く胃腸の弱い人の、暑気あたりの代表的な処方で、体のだるさ、食欲不振、下痢、又は軟便傾向で夜に熟睡出来なく、体重が減少する人に用いる。

補中益気湯(K178)
生来体力が無く、胃腸の弱い人で、体力が消耗して手足がだるく、食欲不振、疲労倦怠感、頭痛、発汗傾向の人に用いる。
この処方は解熱の働きがある。

十全大補湯(K96)
体力の無い全身衰弱のはなはだしい人で、心臓や胃腸の働きが過度に低下して、体力の消耗が著しく、疲労倦怠感、めまい、立ちくらみ、食欲不振、尿量減少、貧血傾向の人に用いる。

小建中湯(K100)
体力が無く、胃腸の弱い人で、顔色が悪くやせていて、腹痛、動悸、神経不安定、頻尿、多尿で疲れやすく、ごろごろ横になるのを好む。

真武湯
体が弱く、痩せて生気に乏しく、夏でも手足が冷え、立ちくらみ、下痢、めまい、動悸、尿量が少ない人で横になるのを好む。

五苓散料(K72)
体力中等度の人で、発汗過多による体力消耗、のどの渇き、水分を多く取るが、尿量が少なく、吐き気、頭痛、浮腫傾向に用いる。
この処方は必要以上に汗の流出を圧える作用がある。

白虎加人参湯(K165)
体力が有り顔色もよく普段でも暑がりで薄着を好む人で、体液が欠乏するので、冷飲料を多量に飲み尿量が多い人に用いる。
この処方は体熱を中和する働きがある。

藿香正気散(K17)
体力の有る人で、暑さで吐いたり、下痢したり、食欲不振、全身倦怠、夏の感冒にも用いる。
夏期常用により胃腸の働きを活発にして、心身を壮快にする働きがある。

八味地黄丸料(K160)
体力中等度又は無いが胃腸が丈夫な人で、疲労倦怠感、足腰のだるさ、腰痛、精力減退、口渇、夜間の排尿過多、排尿困難、頻尿に用いる。

柴胡加竜骨牡蛎湯(K74)
体力中等度の人で、暑さにより不安、不眠、動悸、息切れなど自律神経失調症による神経疲労に用いる。

桂枝加竜骨牡蛎湯(K48)
体力の無い人で暑さにより、のぼせ、不安、不眠、眠りが浅く、嫌な夢を見るなど神経過敏になり動悸を訴える。

<養生及び注意>

日中暑い時間帯の外出をひかえる。
日中の外出時は直射日光をさけ、帽子や日傘を用い通気性の良い衣類を着用する。家に戻ったらシャワーを浴びる。
過労をさけ多めの睡眠、適度の水分補給を心がけ冷飲料の摂り過ぎに注意する。
消化の良い食事、栄養のバランスを心がけて、蛋白質、ビタミン、ミネラルが多く含まれている食事を心がける。

毎年、暑気あたりに悩まされる経験が有る人は、早めに症状に合った漢方薬を服用すると予防する事が出来ます。