風邪
  健康な人でも、年に数回患う病で、薬の中でも風邪薬は使用されることが多い医薬品であり、漢方薬も多く用いられる。


<風邪の自覚症状>

頭痛、発熱、悪寒を伴い、鼻、のど、気管などの上気道に炎症を起こしたものを言う。


<風邪の病因>

寒気に当ったり、雨やスポーツ後のぬれた下着の着用などによる体温分布の不均衡や、ウイルス、細菌、カビ、アレルギー、自律神経失調、体力低下、気温差などが原因で発症すると言われているが、決定的なものではない。


<養生>

風邪を引いたと思ったら、体を温かく、休養を心がけ、タバコを控え、温かくて消化の良い栄養バランスの取れた食事を摂り、症状に合った漢方薬を早めに服用するとよい。
「風邪は万病のもと」と言われているように、こじらすとなかなか治らないばかりか、肺炎など余病を引き起こす原因になる。


<一般化学薬品と漢方薬の相違>

総合感冒薬と称する風邪薬の多くは、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、消炎剤、鎮咳去痰薬の組合せにより構成されているので、副作用として胃腸障害、便秘、眠気や人により薬疹など見られる。又、病状を根本的に治すのではなく対症療法である。

特に、風邪を引きやすい人、高齢者の方には、ぜひ漢方薬の体質改善薬の服用をお勧めします。自然治癒力が高められ、風邪を引かなくなるばかりか体力もつき、肺炎などの予防にもなります。


<代表的な漢方薬処方>

葛根湯(K20)
体力が中程度の人で、発病初期の症状に用いる。
鼻が詰まって奥の方の違和感や、腫痛があり、鼻づまり、くしゃみ、鼻水を繰り返す、また目の充血、目やにが出るもの、

麻黄湯(K179)
体力の有る人で、頭痛、発熱、悪寒、咳、関節痛が有る。発病初期に用いられ、インフルエンザや、子供の鼻閉によく用いられる。

桂枝湯(K50)
体力の無い人で、頭痛、発熱、悪寒、のぼせ、発汗傾向を改善し、発病初期に用いて体の諸機能を高める作用がある。
妊婦の風邪薬としても用いられる。

桂枝加葛根湯(K42)
桂枝湯の症状で、首筋や肩こりが有る場合に用いられる。

桂枝加厚朴杏仁湯(K43)
桂枝湯の症状で、特に夜間に咳き込む傾向が有る場合に用いられる。

桂麻各半湯(K56)
比較的体力の無い人で、頭痛、発熱、悪寒、咳、節々の痛みが有る。発病の初期に用いられる。

小青竜湯(K104)
体力中程度の人で、頭痛、発熱、悪寒、咳、水様の痰、鼻水、くしゃみが有り、発病の初期に用いられる。

麻杏甘石湯(K180)
体力の有る人で、熱が有っても悪寒が少なく、呼吸困難、咳、痰、口渇が有り、発汗傾向の有る場合に用いられる。

五虎湯(K65)
麻杏甘石湯の症状に用いられ、鎮咳作用が強い。

柴胡桂枝湯(K76)
体力中程度以下で、頭痛、発熱、口が苦く、食欲不振、吐気、発汗傾向で、発病後数日を経たものに用いられる。

小柴胡湯(K101)
体力中程度の人で、こじらして、口が苦く、食欲不振、微熱、咳、疲労感がある場合に用いられる。

麻黄附子細辛湯
体力の無い人で、熱はあるが熱感はなく、悪寒、腰痛、疲労感がある。比較的初期に用いられる。

真武湯
体力の無い人で、高熱、咳、痰が有っても熱感が少なく、自覚的苦痛が少ない場合に用いられる。

十全大補湯(K96)
体力の無い人で、風邪をこじらせ、微熱、咳、痰、盗汗、食欲不振、息切れ、脱力感がある場合に用いられる。

香蘇散料(K63)
平常より胃腸が弱く、神経質な人の風邪で、頭痛、めまい、耳鳴がある場合に用いられる。

参蘇飲(K113)
平常より胃腸が弱く、頭痛、発熱、咳、痰、鼻水、嘔吐がある場合に用いられる。

藿香正気散(K17)
夏に多く、暑い時期、冷飲料の取り過ぎで胃腸を冷やしたり、エアコンのかけすぎなどによる風邪に用いられる。

<終わりに>

風邪には葛根湯が全ての症状に効くと思っている方が意外に多いですし、テレビコマーシャルでも同様のものを見た事がありますが、漢方薬は病名で処方を決めるものではないと言う事を御理解していただけたと思います。
又、漢方薬は、長く服用しないと効かないと信じている方も多いようですが、それは誤りで、特に急性の初期症状に、その人に合った漢方薬を用いますと、1時間以内に症状の改善が見られます。
以上二点、留意していただければ幸いです。



花粉症
  春はスギ、ヒノキなどの花粉症の季節です。
花粉症とは、ある種の花粉が風により飛散し、それを吸い込んだり花粉が目の表面や皮膚に付着して発症する症状で、花粉の飛散期に起こるアレルギー性炎症を言います。
花粉症の症状は花粉飛散量に比例、季節や地域により異なります。


<花粉症の自覚症状>

鼻の症状として発作性、反復性のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、痒みが有り、目の症状として涙目、痒み、充血、まぶたの腫れ、目やにが有る。
また、顔や首など露出部分のアレルギー性皮膚炎、時に鼻や口から花粉が入り、咽頭炎や喘息発作を起こす事も有る。


<発症のメカニズム>

花粉を吸入したり目や皮膚に付着すると、生体側に抗体(IgE)が出来る。組織内の肥満細胞表面の抗体(IgE)に抗原である花粉が結合すると、肥満細胞から化学物質(ヒスタミン、SRS-A)などが分泌され発症する。


<病因となる花粉>

春のスギ、ヒノキ、夏はカモガヤ、初夏より晩秋のブタクサ、秋のヨモギが代表的なもので、他にハンノキ、マツ、カナムグラ、サワラ、クヌギ、カシなどが上げられる。
花粉症は地域性が有り、日本ではスギ、アメリカではブタクサ、イギリスではカモガヤによるものが多い。
花粉が空気中に飛散する時間帯は午前中に多く、都市部では一度地面に落ちた花粉がコンクリートの為吸着されず、夕方にも舞い上がって飛散するので二度のピークが有る。
尚、飛散量が一番多いのは、雨の降った翌日の晴天、または晴天で風の強い日の午前中と言われており前年が好天気の場合は、翌年は花粉量は増加する。


<現状>

花粉量が多い年は比例して花粉症の患者は多くなり、発症月日は季節が暖かいと早くなり、寒いと遅くなるが、全体的に患者は年々増加傾向にある。
原因として
・ 戦後大量にかつ広域にスギが植林され、都市化が進み地面がコンクリートになり花粉が吸着されず、いつまでも空気中に漂う。
・大気汚染、ストレス、アレルギー体質の増加、免疫力の低下、遺伝的な要因
が言われているが、詳しい原因は特定されていない。上記に述べた事例の複合的な要因によるものではないかと推察される。


<予防>

花粉が飛散する季節になったら、外出時、花粉症用マスク、メガネ、つばの広い帽子を着用し、家に入る前に衣服を着替えるか花粉を外で払う。
ぬるま湯で洗眼、洗浄、うがい、シャワーなどで洗い流す。洗濯物、布団を干す時間は花粉の飛散の多いときを避ける。または室内に干す。
また発症時、アルコール、刺激物、香辛料の取りすぎや風邪をこじらしたりすると症状は悪化して、慢性鼻炎や慢性結膜炎になる場合が有るので注意を要する。


<化学薬品の治療>

発症時、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ヒスタミン遊離抑制薬、交感神経薬、また重症の場合はステロイド剤の服用や点眼薬、点鼻薬が用いられるが、抗ヒスタミン剤は眠気、だるさ、口の渇きなどの副作用がある。また交感神経薬は高血圧、心臓病、甲状腺機能障害、脳出血を起こした人は注意を要する。


<代表的な漢方薬処方>

葛根湯(K20)
体力が中程度以上で、急性の症状に用いる。
鼻がつまって奥の方の違和感や腫痛があり、鼻づまり、くしゃみ、鼻水を繰り返す、また目の充血、目やにが出るもの、のどの炎症にも効果がある。

葛根湯加川芎辛夷(K21)
葛根湯と類似症状で、元来鼻が悪かったり、こじらせて慢性化した症状に用いる。

小青竜湯(K104)
体力が中程度以上で、主に急性の症状に用いる。
水様の鼻汁が多く出て、くしゃみを繰り返す、涙目にも効果がある。

麻黄湯(K179)
幼児に多く用いられる。鼻づまりが主症状。

小柴胡湯(K101)
体力は中程度以上で、急性の症状をこじらし慢性化したもので、主に体質改善薬として用いる。

柴胡桂枝乾姜湯(K75)
体力が無く、胸脇部の違和感、腹部の動悸、口の乾燥、疲労感、首より頭部の発汗傾向がある。
体質改善薬としても用いる。

十味敗毒湯(K97)
体力中程度で、慢性化して粘液性、または膿性の分泌物がたくさん出るものに用いる。
急性のものに用いると、慢性に移行するのを予防出来る。また慢性の場合は、長期間の服用にて体質改善される。

荊芥連翹湯(K40)
体力中程度で、慢性化して主に鼻の症状に用いる。
粘液性膿性の分泌物があるもので、皮膚は浅黒く、腹壁が緊張している人に用いる。
長期間の服用にて、体質改善される。

麦門冬湯(K159)
体力中程度以下で、鼻の症状と併発して、のどの刺激感、乾燥感や、痙攣性の咳、くしゃみを頻発する人に用いる。

辛夷清肺湯(K112)
体力中程度の人で、副鼻腔炎を併発し、鼻閉症状の重いもので、他の処方で効果がない時に用いる。

麻黄附子細辛湯
虚弱な人、高齢者で急にくしゃみ、鼻水が出て体に悪寒を訴える人に用いる。

小建中湯(K100)
冷え性で顔色悪く、胃腸が弱く、体力が無い虚弱な人で、主に鼻の症状に用いる。
小児、高齢者の体質改善に用いられる。

<結論>

花粉症にかかっていない人も、毎年かかる人も予防を心がけ、放置したり対症療法の治療で済ますと年々症状が悪化、さらに慢性に移行します。

根本からの治療は、体質改善の漢方薬を服用する事をお勧めします。処方を選ぶにあたり自己判断せず経験をつんだ専門家に相談される事が望ましいです。また他の化学薬品とも併用出来ます。時間をかけて根本治療をされるのが最良です。