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パーキンソン病とは
西暦1817年にイギリスの医師であるJ.パーキンソンが報告したことに由来する、慢性進行性の神経疾患です。
中高年の発症例が多く、進行がゆるやかなために老化現象と間違われやすい疾患といえます。このような特徴のために診断・治療が遅れることがしばしばあります。パーキンソン病はそれほど珍しい疾患でもなく、直接的に死に結びつく事はありません。その一方で長期にわたる療養が必要であり、日常生活・仕事・家事に困難が生じるため「生活の質」の確保が重要となります。
パーキンソン病は50〜60歳代に発症することが多い疾患ですが、50歳未満で発症する場合も少なからずあり、仕事や日常生活の障害となります。日本では男性に比べて若干、女性に多くみられます。さらに几帳面でまじめな人に多くみられる傾向があるようです。有病率は人口10万人に約100人で、日本の患者数は約17万人といわれています。厚生労働省が指定する特定疾患のひとつであり、現段階では完治する方法は確立されていません。
具体的な症状について
随意運動(意識して行う運動)を開始することが徐々に困難になり、歩行困難・前かがみ姿勢・姿勢保持困難・仮面様表情などの症状を呈するようになります。初期症状は主に身体の片側に見られますが、2〜3年を経過しますと反対側にも及びます。後期症状になると四肢のいずれかに振るえと筋肉のこわばりがあらわれ、進行すると他の四肢に拡大して全身の運動障害を起こします。歩幅が小さくなり、すり足が原因でつまずきや転倒しやすくなります。言語は低い声で不明瞭になり、嚥下や咀嚼が困難になります。
他にも無気力・便秘・筆記困難・脂顔・抑うつ・寝つきが悪い・手足のだるさ・しびれ・足のむずむず感などの多彩な症状がでる場合もあります。
下記ではパーキンソン病の四大症状と自律神経障害に分類して、より詳しく病態を紹介します。
パーキンソン病の四大症状
- 無動・動作緩慢
初期症状としてしばしば現われます。自分の意思に反して、動作が小さくなり、その動作自体も遅くなる症状です。具体的には長時間の座位など同じ姿勢を取り続けたり、機敏に立ち上がることができなくなります。まばたきの回数も減り、歩行時の手の振る動作がなくなったりします。寝たきりの患者は身体を動かせないので床ずれができやすくなります。
- 安静時振戦(手足のふるえ)
安静時でも筋肉の緊張が高まり、手足のふるえが起こります。
この「ふるえ」のことを振戦(しんせん)と呼びます。
左右どちらか片方から発症して、はじめのうちは時々ですが進行すると持続的に起こります。
- 筋固縮・筋強剛
筋肉の硬直を主とする症状です。本人が自覚する事がない症状で「安静時振戦」と同様に左右どちらか片方から発症します。
- 姿勢反射障害・転倒
倒れそうになったとき、反射的に倒れるのを防ぐ事ができなくなる症状です。初期には少なく、症状が進行すると出てくる症状です。
自律神経に関する障害
パーキンソン病では腸管を動かす自律神経細胞の変性により便秘が多くみられます。便秘以外にも尿が出にくくなるという排泄障害も起こりやすくなります。
その他にも足からの発汗がなくなり、汗の減少は徐々に身体上部にも広がります。その一方で顔に汗をかくようになるので脂ぎった顔になります。
さらに起立性低血圧(立ち上がる際に起こる低血圧)による、めまい・立ちくらみなどの症状もみられます。
病気の診断
脳のMRI(磁気共鳴画像装置)や心筋シンチなどの画像検査にて診断できます。パーキンソン病が疑われる場合は専門の医療機関で検査を受ける事をお勧めします。
発症の原因
大脳と脊髄をつなぐ中脳の左右に黒質(こくしつ)と呼ばれる部位が存在します。ここではチロシン(アミノ酸の一種)を原料としてドパミンという神経伝達物質が作られています。このドパミンは大脳の線条体で機能し、身体の運動を円滑に行うことができるようになります。
この黒質の神経細胞の働きがなんらかの原因で悪くなると、ドパミンの生産量が著しく不足し、身体の運動に障害が起こると考えられています。脳内のドパミン量は20歳頃がピークで、年齢と共に減少し、ピーク時の20%以下の量になるとパーキンソン病が発症するといわれています。現代西洋医学においてはなぜパーキンソン病が発症するかは未だ不明です。タバコを吸う人は罹りにくいといわれていますが、その根拠ははっきりしていません。無論、煙草を吸うことでパーキンソン病が治るわけではありません。
現代西洋医学における治療方法(薬物療法)
薬物を用いた対症療法で自覚症状をある程度は抑えることが可能です。ここでは代表的な現代西洋医学的な薬物療法について概説します。
レボドパ
ドパミンの前駆体であるレボドパ(L-dopa)を用いて脳内のドパミン量を増加させます。しかし、病気の進行そのものを抑制・防止する事はできません。脳に入るまでに約9割が血液中の酵素反応で無効になりますので、ドーパ脱炭酸酵素阻害薬との合剤を服用することで酵素反応を回避します。
ドパミンアゴニスト
大脳の線条体にはドパミンに反応する受容体があり、ここが刺激されると身体が円滑に動作するようになります。ドパミンアゴニストはこの受容体をドパミンに代わって刺激します。通常はレボドパと組み合わせて使用します。
ノルエピネフリン
ドパミン受容体に対して直接影響を与えるものではありませんが、異なるルートから症状を改善するものです。特にすくみ足に効果があります。
抗アセチルコリン薬
神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑えることでドパミンとのバランスを取り戻す薬です。無動や振戦に有効ですが高齢者には精神症状・便秘などの副作用が多く起こるので近年あまり用いられません。
薬物療法の副作用
長期間のレボドパの服用により自分の意思に反して手足が動くなどの不随意運動やすくみ足などの運動合併症が現れることがあります。徐々に薬の効果持続時間の短縮、効果が出るまで時間延長、効果の減少などが報告されています。その他にも吐き気・食欲不振・便秘・幻覚・妄想・不整脈・高熱・意識障害などの副作用が出る場合があります。この様な症状には服用量や薬の組み合わせの調節で改善する場合もありますが、改善しないときは手術療法の併用が行われる場合もあるようです。
現代西洋医学における治療方法(手術療法)
手術による脳深部刺激療法
パルス発生機につながれた電極を脳内に挿入し、電気刺激によって症状を緩和させます。他の手術と異なり脳に対する負担が少ないので、将来的には他の治療に変更することも可能です。薬物で効果が得られない場合や、ふるえなどが軽減できる他にも薬物の効果の持続時間延長が可能となります。
副作用としては手術による脳内出血・感染症などの合併症が挙げられます。また術後の後遺症として、手足や身体の圧迫感・ひきつり感・不快感・手術部位痛・アレルギー・脳内刺激による痛感・めまい・こわばり・しびれ・視覚障害・会話困難などがでる場合があります。
薬物療法と同様に完治させる手術方法ではありません。したがって効果が期待できない場合もあります。
日常生活での注意
気分転換を行いストレスをためない様に心がける、過度の飲酒を控える、疲労を残さない様に睡眠は充分にとる、散歩など適度な運動の実践が挙げられます。
パーキンソン症候群とは
パーキンソン病以外でパーキンソン症状を呈する状態をパーキンソン「症候群」と呼びます。代表的なものでは脳卒中などによる脳血管障害や薬剤によるものがあります。パーキンソン「病」とは原因が根本的に異なるので治療法なども異なります。薬剤性パーキンソン症候群は高齢者に多く、脳内のドパミンの働きを抑制する抗神経薬・消化器系薬・抗真菌剤・循環器系薬・抗がん剤・頻尿治療薬などの服用にて発症することがあります。症状としては歩行障害が多く、パーキンソン病において特有の左右差が認められません。原因となる薬剤を中止または減量すれば改善してゆきます。
漢方薬での治療
漢方医学的にパーキンソン病は「肝気鬱結」「腎虚」「瘀血」「気血両虚」によって発症すると考えられます。しかし、個人差も大きく複数の原因が併存していることがしばしばみられます。しかし、パーキンソン病特有の症状の多くは「肝の働きの失調」によるものと考えられます。
この「肝」とは現代西洋医学的な肝臓の機能、例えば生存に必須な代謝・薬物の解毒・糖質の備蓄などを指すものではなく、あくまでも漢方医学における概念です。漢方医学における肝の主な役割は「筋肉の運動」を安定的にコントロールすることです。
ストレスや加齢などによって肝が弱まると、本来ならば的確にコントロールされている筋肉の働きにも異常が起こります。この点がパーキンソン病と肝が関連しているといわれる所以です。したがって、漢方医学的には多角的にこの肝の力を回復させることに重点が置かれます。しかし、個々人の患っているパーキンソン病にはそれぞれ特徴もありますので、症状の全体像を把握したうえで漢方薬の処方は決定されます。
パーキンソン病およびパーキンソン症候群は漢方薬治療により初期〜中期の全身症状の改善にかなりの効果が期待できますので服用をお薦め致します。現代西洋医学的治療との併用により、さらに良い結果をもたらす場合も多く、現代西洋薬の減量や副作用の軽減にも有効です。
漢方薬では「同病異治」「異病同治」の治療を行います。病名のみで処方を決めるのではなく、体力・体質・病気の進行具合・症状などを参考に東洋医学的な診断で処方が決められます。したがって、素人判断で漢方処方を服用することは効果が期待できないばかりか、副作用が起きる場合もあります。漢方薬の診断に精通した専門の薬剤師に相談した上で服用なさることをお勧め致します。
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