|
|
ドライアイ・ドライマウスとは ドライアイとはその名の通り、目の乾燥を指しています。そしてドライマウスとは口腔の乾燥を指します。ドライアイはしばしば乾性角結膜炎とも呼ばれますが、一般的にはドライアイという名前が浸透しています。しかしながら、ドライアイは厳密に言えばただ単に乾燥感を覚えるだけではなく、診断を確定させるためにはいくつかの基準(ドライアイならば涙の量を測定する試験や特殊な抗体の検出など)が存在します。しかしここでは広義として目の乾燥と口腔の乾燥がある状態として扱ってゆきます。 ドライアイとドライマウスからは少々脱線しますが、目や口以外に鼻の中や気道、さらには膣にまで乾燥性の病態が及ぶことも知られています。鼻の乾燥の場合は鼻の中が傷つきやすくなり鼻血が出やすい、鼻からゴミが入りやすい、空咳が出る、などの症状が起こります。気道が乾燥すると慢性気管支炎や声が枯れたり感染症に罹りやすくなります。膣の乾燥は性交不快感や性交困難に繋がります。
スウェーデンの眼科医であるシェーグレンが1930年代に報告したことにちなんで「シェーグレン症候群」という名前が付けられました。日本では1970年代後半から徐々に知られるようになったようです。しばしばシェーングレン症候群という表記も見受けられますがシェーグレン症候群が一般的です。
シェーグレン症候群(ドライアイやドライマウス)は対処が困難な自己免疫疾患の一種であること、さらに明確な原因が不明ということもあって根本的な治療法は確立されていません。したがって、乾燥した状態に潤いを与えてゆく、乾燥による不快感を解消するという対処療法が基本戦術となります。
漢方薬による治療において中心となるのは「肝(かん)」と「腎(じん)」です。ここで言う肝や腎は西洋医学的(生理学的)な肝臓や腎臓を指しているわけではありません。漢方医学的に肝は気の巡りを円滑にする、血を蓄える、筋肉や目の機能を調節するといった働きがあります。腎は生命の力の源であり生命活動を維持するための基本的な物質である精(せい)を蓄え、水分代謝を調節し、成長を司ります。 肝血の主な働きは全身の臓器に栄養を与え、身体を潤いで満たすことです。肝血が不足すると肝をはじめとする臓器の機能が低下し、全身が乾燥傾向となります。肝の働きには上記で紹介した通り、目の機能維持があり、それが失調すると目のかすみ、めまい感、目の疲労、目の痛み、過度なまぶしさ、そして目の乾燥、つまりドライアイが起こります。さらに肝血は全身を潤す作用もあるので肝血の不足はドライアイをさらに進行させ、さらにドライマウスや皮膚、気道などの乾燥を引き起こします。 腎に蓄えられている精は上記の通り生命活動を維持するための基本的な物質であり、血・津液(しんえき)・気に姿を変えて分化してゆきます。血は肝血で説明したものと同じものです。津液は潤いの源と考えてください。気は生理機能や代謝の維持し、身体を暖め、病邪の進入を防御するなど、やはり多彩な働きをしています。この中で血と津液はまとめて陰液(いんえき)と呼んだりもします。この精が不足すると最終的には気・血・津液のすべてが不足することになります。そして身体を潤す作用がある血と津液の両方が不足することによって全身的に乾燥した状態となってしまいます。血の不足は結果的には肝血の不足に結び付き、上記の流れでドライアイが進行してしまいます。 では肝血や精の不足はどのようにして起こるのか。これも十人十色であり、なかなか断定することは難しいです。しかしながら、肝は精神的なストレスに弱い臓器であり、精神的ストレス下に長時間晒されると徐々に肝血を失うことになります。したがって、ドライアイやドライマウスの症状が現れた場合、精神的ストレスが過度に加えられていると考えて積極的にリラックスすることは非常に重要です。 用いられる漢方薬は上記のもの以外にも多く有ります。潤いをもたらす麦門冬(ばくもんどう)、天門冬(てんもんどう)、五味子(ごみし)。精神を安定させる柴胡(さいこ)、酸棗仁(さんそうにん)、遠志(おんじ)。目の機能を向上させる菊花(きくか)、枸杞子(くこし)などの生薬を含む漢方薬も用いられます。 このように漢方薬によるドライアイやドライマウスなどの乾燥性症状を中心に紹介しましたが、シェーグレン症候群の場合は関節リウマチなどに代表される他の自己免疫疾患も合わせて発症している方も多くいらっしゃいます。
重複になりますがドライアイ、ドライマウス、そしてシェーングレン症候群はその原因がまだ不明なため、日常生活を変えることで予防したり完治させることは困難です。しかしながら、いくつかの注意を払いながら生活することで不快な症状を軽減したり、シェーングレン症候群を原因とする二次的な疾患を予防することは可能です。本節でもドライアイとドライマウスを中心にその日常生活での注意点をまとめてゆきます。 まずはドライマウスの注意点から。まばたきの回数が減少しやすいディスプレイの長時間の凝視は眼球表面の水分を喪失させてしまいます。定期的に休憩を取り、まばたきすることを心掛けることが重要です。さらにディスプレイを目の位置より下側に配置することで目を大きく見開くことを防止できます。 ドライマウスの場合、唾液分泌を促進するアメやガム、甘いものが苦手な方は梅干や昆布なども有効です。注意点としては唾液が不足すると虫歯が発生しやすいのでシュガーレスのものを用いることが大切です。ドライマウスで重要になるのはこの虫歯対策です。定期的な歯石の除去、歯周病のチェック、丹念なブラッシング、ブラッシングの後にイソジンガーグルやセチルピリジニウムなど殺菌成分を含んだが嗽(うがい)薬を用いるのも有効です。 ドライアイの方が積極的に摂りたい栄養素としてはビタミンA(β−カロテンまたはカロチン)、アントシアニン、ω(オメガ)−3系脂肪酸です。ビタミンAは主にほうれん草、春菊、こまつな、人参、鶏のレバー、豚肉、ヤツメウナギなどが豊富に含んでいます。しかしながら、妊娠初期の妊婦はビタミンAを大量に摂取することは好ましくないので注意が必要です。ちなみにビタミンAの前駆体であるβ−カロテンの形ならば妊婦でも安心して摂取可能です。ω−3系脂肪酸は脂が豊富な魚、アントシアニンはブルーベリーやラズベリーなどに豊富に含まれています。これらを上手く食事やおやつとして用いることでドライアイの症状緩和が期待できます。漢方薬治療の節でも触れましたがバランスの取れた食事はドライアイやドライマウスに限らずとても大切です。その中で紹介したような食品を積極的に摂ることを心掛けてみてください。 これら紹介させて頂きました注意点を守りながら漢方薬による治療を行うことがドライアイ・ドライマウスなど乾燥性の症状を取り除く近道になります。なかなかすべてを遵守することは難しいですが、ひとつひとつ、出来ることから行っていくことが大切です。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||